三重に狩猟行脚②

三重に狩猟行脚②

2021年1月15日
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午後の組猟を終え、一度猟師小屋に集まり、今日の反省会としばしの談話。

今年は例年に比べ、猪が少ないそうだ。

この日に入った山も、いつもなら1シーズンで何頭も猪を獲る場所らしい。

たしかに山を歩いていても、真新しい獣の痕跡はあまり見当たらなかった。

渉猟しながら回った猪の寝屋もすべて気配がなかったことにはSさんも首をかしげていた。

豚熱(豚コレラ/CSF)の波が三重県内でも徐々に南下しつつあると話していた。

その影響もあるかもしれない。

人もコロナで四苦八苦だが、猪もコレラで大変なようだ。

おまけにぼくたちみたいに鉄砲を抱え、犬を連れた人たちに追い回されるから余計だ。

自分が猪の立場なら、さっさと死んでしまった方が楽だと思ってしまう。

未知の病原菌に脅かされ、飛び道具を扱う野蛮人とオオカミの末裔に追いかけられる日々なんて精神がもたない。

明日もどうやら別の山で組猟をやることになったようで、また猪たちを追い回すことになりそうだ。

ごめんよ。でも脂の乗ったお肉食べたいんだ。山で会おう。よろしく。

Sさんの自宅にはすでに3頭の猪が内臓を抜かれてぶらさがっていた。

ここ数日で立て続けに搬入されたと話していた。くくり罠に掛かっていたらしい。

まだ1歳になりたてぐらいの猪だったが、お腹に脂がしっかりのっている。

猟犬は全部で5頭いた。

彪毛の紀州犬はとても大きくなっていて、12月に初めて猪を獲ったそうだ。

獣を獲ったことがある猟犬と、そうでない猟犬の顔つきって全然違うとぼくは感じている。

獲物を得た経験がある猟犬かそうでないかは顔つきと纏う雰囲気に現れる。

彪毛の子の顔つきも変わっていた。前回訪れたときとは別人(別犬?)だ。

言葉で表現するのが難しいが、人に例えるなら”苦労の数が皺の数”みたいな感じだ。

険しさと厳しさを味わった表情を持っている。

そして、「本能が開花した」という雰囲気を醸し出す。

ウチの犬はまだ獲ったことがないから、「獲ったことありません顔」をしている。

日が沈み辺りが暗くなりはじめる頃、Sさんの友人たちがぽつぽつと集まりだした。

海で釣った魚を持ってきて、Sさんがそれらを次々と捌き、三枚おろしが積み重なっていく。

山から戻る前、

「海に行っとるやつらがおるで、夕飯の食材持ってくるやろ」

と話していたのはこのことだったみたいだ。

山では獣を追い、海では魚を誘う。恵みの豊かな土地だ。

ぼくが住んでいる土地ももちろん豊かだと思うが、その質は違うように感じる。

魚の名前を聞くと、知らない名前がちらほら。

サンノジ、オジサン、イシダイ(これはわかる)、カワハギ(これもわかる)。

サンノジは磯臭さが強いからおいしくないらしい。でもサンノジが4匹くらいいる。

三枚おろしの身は刺身に、残ったアラは鍋になった。

唐突に”利き刺身”が始まる。

サンノジか、カワハギか、イシダイか。3択なので割とイージーだ。

ぼくもすべて食べてみた。たしかに3種とも白身魚だけど、食感と味はけっこう違ったので当てられる自信がある。

ちなみに、”サンノジは磯臭い”というチート気味なヒントを適用できるかと思いきや、

今日のサンノジは見事に磯臭さがまったくなく、サンノジらしからぬサンノジだそうで、

「こりゃイシダイ言われても分からんなぁ」という発言からこの利き刺身がスタートしている。

「刺身で格付けや」とお正月恒例の某テレビ番組になぞらえているらしい。

別になんでもない、こういう時間が一番好きだ。いいお正月である。

そういえば、ここで一緒にいるSさん以外の人も何回かすでにお会いしていて、

なんの違和感もなく接してもらえているのが、ふと少しうれしくなった。

つづく