梅雨明けと猟犬たち

梅雨明けと猟犬たち

狩りのこと。

例年より半月程長く続いた梅雨がようやく明け、せーのでバトンタッチするかのように突然、真夏の酷暑がやってきた。

たっぷりの雨水と、その後入れ替わりで照り付けてくる日光で辺りの雑草は生き生きとしている。

ということは、草刈りに追われる日々が始まるわけである。

先日、ようやく春に植えたじゃがいも(下栗芋という信州の伝統野菜)の収穫に取り掛かった。

下栗の里と呼ばれる、標高の高い地域で栽培しているから、収穫時期はちょっと遅め。

加えて、この長梅雨で収穫時期はさらに遅れてしまった。

芋は濡れたまま収穫すると、湿気で腐りやすくなってしまうから、雨続きの間は掘れないのだ。

いざ収穫してみると、土の中で腐ってしまっている芋もままあった。

6割ほどの収穫を終えて、残りの時間は例の如く草刈りに従事。雑草が思うままに伸びきっていて、腰の高さほどの背丈で生い茂るその光景はまぁ壮観である。

芋の収穫に着手できるようになったのと同時に、犬たちと山にも遊びに行くようになった。

連日の雨の影響で地盤が緩み、公道沿いですら土砂崩落が相次いでいる状態だったから、山の中もかなり荒れていた。

土砂に飲まれて死にたくはなかったので、しばらくの間、山に入るのも控えていてフラストレーションが溜まっていたところだった。

ようやく、である。

カイが生後6ヵ月を過ぎて、身体もひときわ逞しく、より犬らしい体格になってきて、以前と変わったことがある。

リクとの関係性、いや上下関係と言った方がいいだろうか。

今のところ、力関係はほぼ対等になった印象がある。

リクにちょっかいを出せば返り討ちに遭っていたカイだったが、今はちょっと様子が違う。

どちらかと言うと、リクからカイに喧嘩を売りにいく。

売られた喧嘩を渋々買うのがカイ、といった感じで、

めんどくさそうに、そのかわいがり(リクからするとそのつもりだろうと思われる)に応じるのだけど、

あまり動じていない表情だし、以前ならリクに力負けしていたが、もうそんなことはない。

力任せに押し倒されてしまうこともほぼなくなった。

「カイが本気でやり返したらリクは負けるな」

と観察しながら考えている。

カイがまだ反撃の手に出ていないことによって、”今のところ”力関係は拮抗しているのだけど、

逆転する日はもう近い。カイの出方次第という段階。

そして、この関係性の変化に合わせてなのかは分からないが、リクがカイに対して嫉妬心を抱くようになった。

カイが落ち着いてきたのと入れ替わるように、この頃はやたらにリクが吠えて要求をする。

それは、人の子どもの兄弟や姉妹の関係性とまったく一緒だ。

兄や姉が周囲からかわいがられる弟や妹に嫉妬して、わざとちょびてみたり、注意を引く行動をとる。

まさに、そんな感じなのである。

今まではカイが現れたとて揺るがないと思っていた自分のポジションが(なんせ来た当初のカイは丸っこくてちっこくて何もできないただの子犬だったのだから)、カイの成長が進むにつれ、どうやら力関係が逆転しそうであること、それによって自分の立場がなくなる可能性も出てきた、ということを察知しつつあるのが今現在のリクなのではないかと推測している。

この頃、リクから感じる焦燥感や露骨な存在のアピールの要因はおそらくそこにある。

カイは、カイで至って冷静にリクのそんな様子を一歩引いて見ていて、それがまたおもしろくもある。

果たして、この状況が良いのか悪いのか分からないが、このままもう少し様子を観察していこうと思う。