6月に入ってからのカイの成長ぶりが著しく感じられる。
最近になって、少しずつ山にも連れていくようになった。
そして、ホームセンターで購入したカイのハーネスがそろそろ限界になってきたので、
新しい首輪に買い替えた。
色々と悩んだのだが、結局リクとお揃いの青色の首輪にした。
カイと新品の首輪の馴染まなさが微笑ましく感じられる。
散歩はリクと一緒に行っていたのだが、思うところがあって、やめた。
山に行く際もカイだけ連れて行っている。
これが猟犬ではなく、愛玩犬であるなら、なんら問題はないのだろうけど。
“猟犬としての見切りをつける”ことに関しては三重の猟師さんからも話を聞いていて、
とても難しい判断であるし、そもそも素人の域をでない自分にその判断ができるのかと言われると、
微塵の自信もない。自分の経験の薄さが情けなくなる。
「そんな気がするから」という曖昧な根拠でしか。
往々にして、“勝手な期待の押し付け”というものは幸せを生まない、とぼく自身は感じている。
相手が人であろうが、犬であろうが。
「道楽でしょ」
その言葉が、妙に深く、印象的に頭に残る。
先日、ある猟師さんのお話を聞きたくて、自宅近くの消防署を訪ねた。
その方(以下Kさん)は消防士でもあり、猟師でもある。
Kさんは、単独で山に入り、イノシシを獲る。傍らには、一匹の犬を連れている。
以前からしきりに言っていた、“単独単犬”での猪猟をやられているのだ。
そして、ぼくの理想の形にかなり近い狩猟スタイルでもある。
犬とともに山を歩き、イノシシの寝屋に寄り付き、寝屋近くで獲る。
特徴的なのは、猟犬が猪に対して攻撃の積極性を見せないところ。
噛みついて、絡みながら猪を足止めするような方法をとらない。
慎重に、じっくりと近づき、猟犬が猪に直接触れることはなく、仕留める。
ボクシングに例えるなら、ヒット&アウェイのアウトボクサー。
イノシシに向かっていき、噛みついて、パワープレイで足止めする、いわゆるインファイトなアプローチとは真逆のやり方。
実は、Kさんのことを知ったきっかけはYouTube。Kさんご自身が、アクションカムを用いて撮影した狩猟の様子が動画としてあがっていた。
あとになって、その映像の中の人が、なんとすぐ近くにいらっしゃるという事実を知った。
こういう狩猟スタイルをやられている方はこのあたりではほとんど知らない。
土地柄の地形的な理由や、生息する獣の種類や密度によるところが大きいとは思うけど。
ぼく自身も、身近にそういう人はいないのだろうと思い込んでいたのだが、灯台下暗しとはよく言ったものである。
どのような経緯で現在の狩猟スタイルに至ったのか、その実状をどうしても直接聞きたくなった。
「どんな狩猟をやりたいの?」
挨拶を交わし、開口一番に言われた言葉。直球。
以前から思い描いている狩猟スタイルのこと、
猟犬を飼いはじめたが、試行錯誤の連続であること、
直球ど真ん中には、同じ返球をするのが礼儀だと思い、胸中にあったことをぶつけてみた。
「俺は変わり者だから、参考にならないかもよ」
そう言って、話は人と犬の関係性からはじまった。