狩猟の“これから”について考える①

狩猟の“これから”について考える①
2020年2月5日
gen

「狩猟を取り巻く状況が今後どうなっていくのか」ということは、狩猟を実際にやるようになってから常に考えてきました。

「観察・考察・推察・洞察を繰り返し、それによって導き出された未来を想像し、その上で自分がどうありたいのか、どうあるべきかを見極める」

そんな言葉を以前にある方から聞いたことがあります。

「自分はどんな狩猟をしたいのか」

先日書いた記事もそんな内容でしたが、
今回はこれから僕が狩猟者として歩みを進めていく先の未来はどうなっているのかという個人的な見解について書いていきます。
※あくまで個人的な予測なので「ふ~ん」くらいで読んでください。

狩猟の”これから”を考えるとき、現段階で外せない要素というのは大きく分けて、

①狩猟者の高齢化と狩猟人口減少

②ジビエ肉としての利活用

③有害鳥獣駆除捕獲という側面

この3つだと考えています。

①狩猟者の高齢化と人口減少

これは日本全国どこでも取り沙汰されている問題です。

「狩猟者がいない」

「新規狩猟者の確保」

そんな声があちらこちらで。

「狩猟者の高齢化」と「狩猟者人口減少」というのは不可分な要素で、
高齢化しているから減少しているとも言えるし、新規狩猟者(若年層)の流入がないから高齢化している、とも言えます。

そもそもこの高齢化と人口減少を引き起こしている要因は、
山間部における1950年代高度経済成長期からの人と状況の動きにあると考えています。

戦後、貴重なタンパク源として野生鳥獣(特に鹿や猪や熊、猿も薬として扱われていたそう)は当時も相変わらず高値で取引されており、タイミングを同じくして海外から入ってきた猟犬(ビーグル犬やハウンド犬)の使役によって従来よりも格段に効率的な獣の捕獲が可能になりました。

この時期に、現在広く行われているような洋犬を使役した大人数での巻き狩りの狩猟スタイルが生まれ、一気に全国に普及したのだと推測します。

それまでは、和犬を使役した単独もしくは少人数での追い込み猟や、単独での忍び猟・夜間の待ち伏せ猟が主流で、僕がいる地域でも洋犬が入ってきたのはちょうどこの時代であったと文献で目にしたことがあります。

そして、猟師で獣を獲れば儲かるという事実と、洋犬を使った巻き狩りのゲームハンティングとしての娯楽性が起因となって、この時期に狩猟者がぐっと増加しています(それ以外の理由や信念で狩猟をやられてた方もいるはずですので、それは前提の上で、多数の人は、としておきます)。

この世代の人たちが、現在の60~70代の猟師さんたち。

狩猟界の団塊世代、というわけです。

高齢の猟師さんたちが徐々に引退されてい行く中で、もうあと5年から10年もすると、
この団塊世代の方たちがごそっと抜けるときが訪れます。

②ジビエ肉(資源)としての利活用

ここ数年でよく聞くようになったジビエ(gibier)という言葉。

フランス語で、狩猟で捕獲された野生鳥獣の肉を意味します。

地方の資源活用(地方創生)を促す国の施策としても謳われています。

この背景には有害鳥獣駆除という側面が深く絡んでいるわけですが、
今現在全国各地で食肉の解体処理施設が群雄割拠していて、
狩猟で捕獲した野生鳥獣のお肉を流通にのせる動きが活発化しています。

最近ではブロックチェーンを導入して個体のトレーサビリティを、という話も出てきているぐらい。

果たしてジビエ肉がどれくらいのレベルまで世の中に浸透し普及するのかは判断がつきませんが、
需要と供給のバランスはまだまだ整っている状況ではないようで、需要側の量と種類、供給側の量と質の課題はしばらくは残存するのだと思います。

③有害鳥獣駆除という側面

現在狩猟には大きく分けて、

「狩猟期間に行われる狩猟」と「獣害対策として行なわれる有害鳥獣駆除」の2種類があります。

2種類と言っても、両者を区別する具体的な要素は、

・期間

・報奨金の有無

・地域的な制限

・捕獲可能な鳥獣の種類数

ぐらいなもので、「罠や銃器の猟具を使って獣を獲る」という内実自体はそれほど変わりません。

農林業における野生鳥獣の経済的被害が深刻化する中で、
報奨金を設定、狩猟期間外の狩猟行為を許可し、安定的・持続的に害獣を捕獲する方策として有害鳥獣駆除捕獲が行われています。

時を遡ると、実は弥生時代から既に獣害対策は行われていました。

縄文時代までは狩猟採集が生活の基盤でしたが、弥生・古墳時代になると農耕稲作文化が定着して安定的な食物の供給が可能になり、それと同時に「栽培した作物を野生動物に荒らされる」という事態も発生しました。

現在のような積極的な捕獲というよりは夜通しの追い払い行為や防護柵や堀の設置のような消極的な獣害対策だったようですが、人の生活圏を「守るための狩猟」が行われるようになったのは遥か昔から、ということになります。

現在の有害鳥獣駆除も、その意味でいくと「守るための狩猟」と言うことができます。

効果的な獣害防除策・捕獲技術が研究・実践されながらも、それを実地で実行していく人材が不足していることも事実です。

それは狩猟者の高齢化と狩猟人口減少の影響も大きく受けているはずです。

3つの要素が重なるとき

上に挙げた①・②・③の要素は並列的に存在していて、お互いに影響し合うはずで、するとどういう状況が発生し得るか。

狩猟者の数がごそっと減る、これは全国でほぼ同時多発的に起こるはずです。
新規狩猟者確保の動きも現在のままであれば爆発的に増えるなんてことはなく、減少の波が勝るでしょう。

そして獣の数は減るどころか増加の一途を辿る。

農林業被害も増大。一方で捕獲された野生動物の資源としての利活用の動きも進む。

”効率的かつ合理的な有害駆除”と、”安定的かつ生産的なジビエ肉の供給と消費”を促すためにはどうすればよいか?

具体的に言うと、
”有害鳥獣駆除の報奨金の吊り上げ
”新規狩猟者確保のための優遇措置・効率的な捕獲技術マニュアルの構築”
そしてその先に、
”AI・ドローン技術の導入”
があるのではないかと考えています。
実際に東大では、ドローンとAI技術を駆使したニホンジカの追い込み・囲い込みの捕獲方法の研究とそれをビジネスモデルとして確立していく動きが進められているそうです。

さらに安定的かつ生産的なジビエ肉の利活用を促すために、ビジネスとしての捕獲・獣害対策業(有害鳥獣駆除捕獲)と解体・精肉業(ジビエ肉利活用)の分業が進んでいくのではないでしょうか。

つまり、狩猟というものが仕事として成立する未来がすぐそこまで来ているのではないかと思うのです(すでに職業として”解体精肉業も含む猟師”をやられている方々もいらっしゃいます)。
それは過去に野生動物を狩猟で獲り生計を立てていた時代のそれよりも、さらにマニュアル化され、分業化され、効率化が進んだ、より合理的な形として。

それは「生業(なりわい)」というよりも、「ビジネス(事業)」と言った方が適切かもしれません。

今回は狩猟を取り巻く状況についての見解を書いてみましたが、そんなそう遠くもない未来に「狩猟という営みがどう在ってほしいのか」「自分はどう在りたいのか」ということについて次の投稿で書いていきます。