「ハクビシン」という名前はよく聞くと思いますが、
実際に見たことはありますか?
漢字で書くと「白鼻芯(心)」。読んで字の如く、鼻筋が白いのが特徴です。
今日はそんなハクビシンを捕獲したお話です。
トマト食べたのだぁれだ?
「畑のトマトが食い荒らされて困っている」
そんな連絡をご近所の方から受けました。田舎で狩猟をしている方ならこんなことも日常茶飯事なのではないでしょうか?
その犯人は「ハクビシン」。
目撃情報もありましたし、近くに糞もあったのでハクビシンで間違いないと判断。
捕獲作戦を開始しました。
罠で捕獲
今回は小動物用の箱罠で捕獲することに。
師匠に連絡すると、「あるから持って行って使いな~」とすぐに貸してくれました。
こんなやつです。
構造はとてもシンプルで、
①この部分に餌を設置
②誘引されたハクビシンが仕掛け部を引っ張る
③このストッパーが外れる
④扉が落ちて閉まる
これだけです。
匂いの強い餌だと誘引しやすい、と聞いたので煮干しをメインとして設置。トマトやキュウリも撒いてみることにしました。
ところが、なかなか狙いのハクビシンは入らず…
煮干しにつられた野良猫が第一号でした。
煮干しだと猫も来てしまうよなぁと反省し、
野菜系で攻めてみることに。トマト多めのキュウリも足して再チャレンジ。
ところがこれでもしばらく入らず。
野菜だと弱いのかなと判断し、次は果物系で攻めてみる。
バナナを設置。匂いも味も申し分なし。どうだ!
が…これも不発。
次はリンゴをチョイス。真っ赤な見た目は誘引力抜群なはず!
…見事ハクビシンがかかりました。
捕獲したあとどうするか
捕獲に成功すると、依頼主も喜んでくれて一件落着。
ではなくて、ここから捕獲者(狩猟者)の仕事がまだあります。
止め刺し
捕獲したハクビシンに「これに懲りたらもうこんなことするなよ」とお説教して逃がしてやる、なんてことは通じるわけもなくて。
逃がせばまた畑の作物を食べ漁るでしょう。ハクビシンも生きるために食べるわけですから。
ですので、ハクビシンを殺す必要があります。
こういうことを「止め刺し」と言っています。
人間のご都合ですし、残酷です。
が、私はやります。
ネズミや、カラス。
人の生活に支障をきたす生き物は「害獣」として扱われ、駆除されます。
野生動物の「生きる」領域と、人の生活を「守る」領域。
その境界が重なる部分ではこういったことが起こります。
狩猟を始めるときに、自らの意図にそぐわなかったとしても目の前の獣を殺さなければいけない、という場面は必ずくるだろうと覚悟していました。
先輩たちからもそういったお話は聞いていましたし。
ある意味、私が暮らしているような山間部の地域においては、「狩猟者たるものの役割」だと思っています。
止め刺しで失敗をする
箱罠に入ったハクビシンを空気銃で止め刺しすることにしました。
ですが、ここでひどいミスをしました。ミスというか完全に技量不足です。
6発撃ってもハクビシンンの止め刺しを完了できませんでした。
狙いどころが悪かったのか、もっと良いやり方があったのか…
結局川に持っていき、箱罠ほごと水に沈めて溺死させました。
正直かなりへこみました。ハクビシンへの申し訳なさと、自分に対しての情けなさと。
ハクビシンが静止するような工夫と、空気銃の射程距離を考慮すれば一発で止め刺しできただろうかと、その後延々と考えていました。
捌くかどうか迷う
そのハクビシンを捌いて食べるかどうか迷いましたが、
最終的には解体はやめて山に置いてきました。
自分で獲ったものは極力捌いて食べる方針で狩猟をしていますが、
解体に要する時間や個体の状態(肉の質、脂のノリ、取れ高など)と自分の時間を天秤にかけて解体できないときもあります。
自分でも都合がいいと思いますが、そういうときは正直なところ、あります。
有害駆除従事者としての葛藤
「自分で獲った獲物は捌いて食べる狩猟」
「果たすべき義務や責任を達成するためにやる狩猟」
この二つがぶつかるときがあります。
狩猟を始め、有害駆除従事者になってから、この二つの間の葛藤をずっと抱えています。
未だにその二つの折衷案というか、ちょうどよいところの落としどころはないものかと探っています。
有害駆除も必要なことだという認識はありますし、その恩恵を多分に受け取って慰安す。
そこと自分の狩猟に対するポリシーやモチベーション。
そのあたりは今後も悩みながら、よりベターな方向へとあるちえいくしかないのかな、とうのが今のところの結論です。