コール猟④【2019.10.26】

コール猟④【2019.10.26】
gen

前回記事(コール猟③【2019.10.22】)で書いていた通り、
今回はいつもより奥の山を渉猟しながらポイントを探してのコール猟をしてきました。

結果、コール猟での猟果はありませんでした。

が、棚からぼた餅的な出来事があったので書いていきます。

とにかく歩く

雄鹿が縄張りをつくっていそうなエリアを目指し(ヌタ場、フィールドサインの濃いところ、盆地地形なところなどなど)、とにかく歩いて山の地形や木の植生などを見ました。手元のGPSと照らし合わせながら、このあたりはいけそうだというポイントをプロット。

山の歩き方も獣に対するアプローチの仕方もまだまだですが、
少しずつ前進できているなと感じられる瞬間がありました。

この写真の中に生物がいます。分かるでしょうか?

以前の自分なら気づきもせず歩いていたと思います。



尾根を登りながら、

「あ、足元にいるな」

とその存在をしっかり認識して歩けている。

山に目が慣れる、というのはこういうことなのだろうか。

獣に忍び近づいて獲るのであれば、こちらの存在に気付かれるより先に相手を見つけ、位置を把握する必要がある。
ということはなるべく遠く、広く視点を伸ばしておかなければならない。

しかし獣のフィールドサインは近くに寄らないと判別できない。
足跡、糞、角や牙をかけた跡。
なので、近く、狭く視点を縮めておく必要もある。

相対する視点(索敵範囲)の拡縮。

その視点の往復が小刻みになってきた、ということだろうか。

「ひとつ」を見るともなく「全体」を見る。

その領域にはまだまだ程遠いが、
半歩でも近づけた気がして嬉しくなる。

きのこ

何を意識するのか、で物事の見え方は様変わりします。
1年、2年前には見えていなかった景色が見えるようになってきている、という実感。

この積み重ね、なんだと思います。

邂逅

尾根を登り始めてしばらくすると、視界が広くひらけた場所に出ました。
そのひらけた場所の一番遠くの端。
そこに一頭の鹿が草を食んでいるのが見えました。

距離にすると150mほど先。

雌鹿でした。白い体毛のお尻をこちら側に向けて悠々と食事中。

ですが、ここで鉄砲を撃ってしまうと、コール猟で狙っている雄鹿を獲れなくなってしまう可能性があるので見送ることにしました。

雌鹿の反応が見てみたかったので、試しに鹿笛を吹いてみました。

音の鳴ったこちらの方に顔を向けてしばらく観察したあと、
木々の中へと消えていきました。

雄の鳴き声が聞こえても寄ってくるわけではないようです。

さらに奥へ

ヌタ場

雌鹿をあとにして、尾根を登っていきます。
するとヌタ場を発見しました。真新しい足跡もちらほら。
鹿の足跡です。

近くには鹿の角なのか、熊の爪なのか判別できませんが、
獣がいるという痕跡がありました。

痕のあった高さから判断するに、猪ではないと思います。

なだらかな傾斜が付いた、獣が好みそうな場所。
ここでコールすることにしました。

コール一回目。
尾根や谷間を挟んでいないので、遠くまで鹿笛の音が響いていくのが分かります。5分ほど待機するも反応はなし。

コール二回目。
カケスがすぐ近くで鳴いていて、木々の上をちょんちょんと跳ねている音がずっと聞こえいます。木の枝がぱきっと折れて落ちてくるたびにドキッとして緊張が走ります。

コール三回目。
反応は…なし。残念ながら近くにはいないようでした。
と、諦めて立ち上がろうとすると、鳴き返し。
方向として自分がいる位置よりも下から。かなり遠い。
もしかすると向かいの山からの鳴き声が聞こえているのかもしれません。

ともあれ、下山しながら聞こえる方向へと寄ってみることにしました。

下りながらもさっきとはまた違う方向から鳴き声が響いてきます。
しかも結構近い。

登ってきた尾根を辿って、下っていたのですが、
登りのときには気が付かなかったヌタ場を発見。かなり大きめです。

使っている痕跡も濃く残っていました。

ここで再度コール。

が。う~ん。なぜだ。反応がない。

写真を撮り忘れてしまいましたが、このポイントには、
以前に待ち伏せ猟で使っていたのか、櫓のようなものが大木の幹の上に作られていました。そのときからこのヌタ場は獣が頻繁に使っていたんでしょう。

鳴き声は度々聞こえてくるものの、実際には反応がなく近づいてくる様子もない、という状況が続きました。

路線変更

先ほど雌鹿を見たポイント。
あそこで雌鹿が消えていった先に、もしかすると鹿の一団がいて、雄鹿もいるのかもしれない。鳴き声が聞こえてきた方向でもあるから可能性は高い。

ということで、迂回しながら雌鹿が入っていったエリアに反対側からアプローチしてみることにしました。

下るときは体重がかかる分、足音も大きくなりやすいので、
音を最小限に抑えるよう意識して歩きます。

少し下っては止まり、辺りを観察。また下って、の繰り返し。

20分ほど下りてきたところで、下方60~70mあたりを右から左にピョンピョンと跳ねていく何か。

鹿だ。

まだかなり小さい小鹿。
こちらの存在に気付かれたというよりも、たまたま動いたタイミングを目撃しただけのようなそんな感触。

そしてその場で立ち止まってよく見ると、
小鹿が跳ねていったあたりにもうひとつ鹿のようなシルエットがうずくまっている。
動きはない。

距離はそれなりにあるので、よく目を凝らす。

白い部分がある。朽ちた木の皮か?お尻か?

茶色く丸いシルエットから情報にすらっと伸びているのは首か?
それとも切り株から伸びた枝か?

さらにじっと見つめる。

すらっと伸びた何かの先の小ぶりな何かがピクッピクッと動いた。
それは明らかに鹿の耳だった。

その動きがきっかけとなって、ぼんやりとしていたその物体の輪郭がはっきりと浮かび上がってきた。

間違いなく鹿だ。

鹿がうずくまって休みながら首だけを上に伸ばし、斜面の下側を見ている。
上方にいるこちらには背を向けた状態。
こちらには気づいていないようだ。

プロポイントの赤い発光点に鹿の首を入れ、ゆっくりと引き金を引く。

発砲音とともに、首がくたんと折れ、卒倒しました。

近づくと雌鹿でした。大きさから察するに、序盤に見た雌鹿と同じ個体かもしれません。

弾の着弾点は狙ったポイントより10㎝ほど下でしたがネックショット。
心臓に剣鉈を突き刺し、止め刺しと血抜きをしました。

こちらの存在に気付いていない状態で仕留めた鹿は初めて。
解体して確信しましたが、お肉の状態がとてもつもなく良い。

血抜きを迅速に行った、内臓をすぐに出した、すぐに冷やした、ということではない他の要素がこの結果につながっているとしか思えないのです。

最近、罠に掛かった獣を生け捕りにして、ストレスのない状況で止め刺しをして捌く猟師さんの話をよく耳にします。

ノンストレス状態での止め刺し。これなのだろうか。

技術・技量の向上によってそれが可能になるのであれば、追及する価値はあるなぁと感じました。