日々狩り旅【三重編】④

日々狩り旅【三重編】④
2019年10月12日
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キャンプ泊の翌朝。
日の出の光を瞼の向こう側に感じながら目を覚ましました。

空気は澄み切っていて、吹いてくる風は少し冷たい。
川べりをよく見ると、獣の足跡がありました。
前日の夕方にはなかったので、私たちが寝静まったあとにここを通ったのでしょう。

そんな気配も感じることなくぐっすり眠っていました。
焚き火の残り火で朝食の準備をします。
前日の夜にこねこねしていたパン生地を竹の棒に巻き付けて。

まきまきパン

一緒に行った方が、その場でコーヒーも入れてくださいました。

淹れたてコーヒー

のんびりとした朝を過ごしていると、Sさんに一本の電話が。
どうやら他の猟師さんの罠に鹿が掛かっていたそうで、引き取ってほしいとの依頼だそうです。
Sさんの自宅横には食肉加工処理施設を併設されていて、そこで獣のお肉を食肉として加工・販売しています。
ご自身で獲った獣はもちろんですが、他の猟師さんからも今回のように引き取りの依頼が来るそうです。
「猟師」をちゃんと「生業」にされている方に初めて出会いました。

経験がある方はよく分かると思いますが、獣を解体してお肉にすることは相当な神経と労力を使います。
それをお一人でこなされていることに尊敬の念を抱かずにはいられませんでした。

Sさんのお話の中でもひしひしと感じていましたが、とても論理的なんですよね。 「狩猟」という自然を相手にした営みにおいては感覚的な分野が先行するイメージですが。
もちろん豊富な経験があってこそですが、それと同等の知識と経験に基づくロジックが自分の中に確立されています。

だから、理路整然としてる。その意味では妥協がない。
無駄がない、という方が適切かも。

無駄が削ぎ落されて洗練されている感じです。

プロの腹抜き

引き取った鹿の腹抜きをするというので、見学させてもらうことに。
牡と牝、2頭の鹿が搬入されていました。

天井から伸びたチェーンとロープで鹿を牽引して吊り下げます。

とにかく手際が良くて驚きました。
吊り下げながらの内臓の抜き方も、
「なるほど、こうやるのか」と非常に勉強になります。

この時期の牡の鹿は声帯が発達していて、食感がとても良くて美味しい。
そんなことも教えてくださいました。まったく知りませんでした。

何がすごいって、内臓を取り出したお腹の断面に体毛がほとんど付着していなかったこと。
あれだけのスピードで腹抜きをこなしたのに、これほど綺麗な状態ということが驚愕でした。

目玉焼き・パン・猪ベーコン

腹抜きを見学した後、テント場に戻って朝食。
猪肉のブロックを前日からスモークしておいたベーコンが最高に美味しかったです。やっぱり皮つきの方が個人的には好き。

モズクガニと鹿笛猟

モズクガニ
茹でモズクガニ

昼食にはモズクガニをボイルしたものをいただきました。
いわゆる上海蟹と同類ですね。これも身はプリプリ、味は濃厚で美味でした。

伝統的な鹿笛

モズクガニを食べながら、この時期の鹿笛猟についての話に。
この地域でも牡鹿の発情期になると、鹿笛猟をするそうです。
しかし、現在広く行われている「コール猟」とは全く違うものでした。

「コール猟」は海外から入ってきた狩猟文化で、
牡鹿の鳴き声を真似た鹿笛を吹いて、発情期の牡鹿を呼び寄せる猟法。
鹿笛の音を聞いた牡鹿は、自分の縄張りにライバルの牡が入り込んできたと勘違いして寄ってきます。

Sさんによると、このコール猟のやり方では、まず先に喧嘩っ早い若い牡鹿が寄ってくるそう。

本当のその場のヌシというのは、そういう誘いにはなかなか乗ってこない。

この地域の伝統的な鹿笛猟は、牝鹿の鳴き声を真似るそうです。
その鹿笛の構造を図説してもらったものが上の写真。

この牝鹿の鳴き声を聞きつけて、どの牡鹿よりも早く、真っ先に飛んでくる牡鹿がヌシだそうです。

非常に興味深い話でした。
これはぜひ自分でも実践して確かめてみたいと思い、
伝統的な鹿笛の作り方を教えていただきました。

昼食を食べ終えたころ、そろそろお暇の時間になり、
お土産に生きたスッポンをいただきました。手土産感満載で渡されたので面白かったです。

スッポンはこのままでも一週間程度は平気で生きているそうです。
やっぱり生命力がすごい。

今回の旅と出会いに感謝です。
Sさん本当にありがとうございました。