日々狩り旅【三重編】③

日々狩り旅【三重編】③
2019年10月11日
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夜も深まってきた頃、Sさんから狩猟についてのお話を少し伺うことができました。今回の旅の中で、一番印象に残っているのは、このときの対話の内容です。

その話の節々でSさんの人柄や、狩猟に対する姿勢、物事の見方や捉え方が感じられました。

「狩猟という一つの共通項を通して、その人の生き方に触れることができたなら、きっと自分の人生にも活かせるものが得られるはず」
という思いは間違いではなかったです。

Sさんとのお話の中で得た知見が歴史的・文化的背景と照らし合わせて正しいのかを判断する知識はまだ持ち合わせていませんが、
少なくとも現段階の私にとっては、狩猟(特に猟犬を用いた狩猟スタイル)に対する見方を大きく揺さぶられるものであったことは間違いありません。

猟犬との関係性

Sさんのご自宅には猟犬が3匹いました。
3匹ともベースは紀州犬だそうです。

トラ模様の毛並みが特徴的なこの子は単犬単独猟での猪猟に連れていくそうです。人懐っこくて、愛嬌のある子でした。
近づくと、なぜだかお尻をこちらに向けてすり寄ってくる仕草がなんとも可愛かった。

Sさんのメインの狩猟スタイルは単犬で猪を獲りにいく単独猟。いわゆる「一銃一狗」と呼ばれるものです。
一匹の猟犬を用いて、猪を探索・発見し、寝屋(猪の寝床)で仕留めるという猟法。
この猪単独猟ではトラ毛の猟犬を連れていくそうです。
つまり猟のスタイルによって、猟犬を使い分けているということです。

Sさんが単独猟で猪を狙うとき、
猟犬は山の中に入り猪の寝屋にたどり着くまで、主人のもとから遠くへ離れていってしまうことはないそうです。
常に主人の見える範囲にいて、猪の気配を感じ取り、主人が鉄砲を構えたのを見て猪を起こすのだそう。

もし主人から離れて山中の遠くの寝屋で猪を発見したとしても、
主人が現場に到着する前に猪に逃げられてしまうか、鳴き止め(吠えたてて猪を威嚇し足止めすること)噛み止め(噛みついて物理的に猪をその場に留まらせること)している間に猟犬が猪の返り討ちに遭ってしまう危険性がある。

それでは猪を獲れる確率も低く、長期的にみたときに猟犬は怪我を負うリスクが高まるため短命のサイクルになってしまう。

「いかに確実に、かつ猟犬を危険に晒すことなく猪を獲ることができるのか」

を追及した結果、現在の狩猟スタイルに至ったそうです。

まさに人犬一体の「阿吽の呼吸」という言葉がふさわしい猟法です。


実践・失敗・考察

Sさんは今までに70頭ほどの猟犬を見てきたそうですが、
それだけの数の犬と接していても現在の単独猟において猟犬としての理想的な仕事をこなせる能力を持った犬というのはそうそう出会えないそうです。

猟犬と通じ合えている、と感じるとき。
そのときには、アイコンタクトで犬は主人のやりたいことを把握し、主人の一挙手一投足に瞬時に反応する。

主人が鉄砲を構えた瞬間を見て、猪に向かって吠えたてて牽制し、
主人が撃ちやすい方向に誘い出して、自分は邪魔にならぬように視界から消える。
そんな芸当をやってのけるそうです。

「犬との信頼関係があってこそできること」

そう仰っていたことが印象に残っています。

その境地に辿り着くまでにもいろんなタイプの猟犬を育て、
一緒に山を歩いて猪を獲り、時には死なせてしまうこともあったそうです。

そうして深く蓄積されていった経験によって、
今のスタイルは担保されているように感じました。

だからなのでしょう。
Sさんの話す言葉には確かな経験に基づく説得力と、
穏やかな口調の奥に大きな岩のようなどっしりとした力強さが感じられました。

自分が見出そうとしているものに対する真摯な姿勢。
探求心を持って、目の前で起きていることを敏感に感じ取り、
そして柔軟に変化していくこと。

実践と失敗と考察をひたむきに繰り返し、
その末に身につけた経験値(知)が発する圧倒的な何かがあります。

「狩猟」を通じて生き方を学ぶ。
狩猟に対する猟師さんの姿勢や向き合い方から学び取ったものは、
そのまま人生にも活かせるものだとつくづく思いました。

やはり、本気で何かに打ち込んでいる人の中には(当然狩猟以外の分野でもそうででしょう)、その人の人生哲学が構築されています。

狩猟って面白い。