トレーニングと散歩

トレーニングと散歩

2020年5月31日
狩りのこと。

少し前から、リクとカイの散歩の回数を増やしている。

朝夕の2回。

カイが生後2ヵ月を越えたあたりから、服従訓練(座れや伏せの基本動作のこと)をスタートさせ、ワクチン接種を終えた段階で、散歩にも連れていくようになった。

カイは物分かりが非常に良く、基本動作にしてもあっという間に習得した。

「来い」「座れ」「伏せ」「待て」は既に理解していて、注意がこちらに向いているときであれば、
難なくこなす。

とは言え、”注意がこちらに向いているとき”というのがポイントで、
他に注意が向いてしまっているときは、こちらからの指示も耳に入らず、という感じなのだ。

散歩のときがまさにそうで、様々なにおいや音、猫、虫、鳥。

興味を引くものばかりで、彼の注意力は散漫になる。

こちらのことが意識にないときに指示に従わせようとするのは、なかなかにエネルギーがいるし、従わないとやきもきする。ともすれば「なぜ言うことを聞いてくれないのか」という感情で接することにもなり、その場合は逆効果でしかないから、他に興味が向いているときは、干渉しないでひたすら行動を観察することにしている。

ということで、ひとまず、カイにもこちらの意図を理解して、指示を聞いてもらいたいけども、
ぼくもカイの行動を今まで以上に観察して、彼の性質や癖を理解するところから始めることにした。

「どういうものに興味を示すのか」

「興味を示し続ける時間がどれくらいか」

「どのタイミングでこちらに注意が向くか」

意識的な観察を始めると、気が付くことは非常に多く、
殊に、散歩中はカイ自身も嬉しくて興奮気味であるから、平静でないときの様子を確かめられる。

基本的に、トレーニング中は自宅という馴れた環境下で行っているから、
こちらに注意が向いているのは当たり前のことだ。

例えば、盲導犬や警察犬。

彼らの主への忠実さとか、理性的な態度や行動ってすごいものだなと改めて感じている。

状況に左右されない、揺るがない姿勢。

彼ら自身もだし、トレーナーもまた然り。

一体どんな知識や経験を身につけ、訓練に臨んでいるのか、とても気になる。

以前は、猟犬というと猟欲を開花させて本能の赴くままに、みたいなイメージを先行させていた。

だからなのかは分からないけど、
周囲の猟師さんで服従訓練をしっかりやっている方をあまり見たことがない(ちょっと前に初めてそういった訓練をしている猟師さんと猟犬に出会った)。

理性が本能的な能力の発揮を阻害する感覚が経験則であるからだろうか?

その真意は分かっていないのだけど、ぼく自身も、猟犬はそういうものだし、それが良いのだと考えていた。

けれども、犬との“阿吽の呼吸”で獣を獲る猟を目指すなら、
何より犬との信頼関係を築いて、お互いにそれを実感していることが重要だし、
“本能に任せて”ではなくて、犬自身の猟欲や本能をコントロール下に置いた行動が必要になってくる、という認識に変わってきた。

一言で表すなら、“落ち着き”だろうか。

加えて、実猟において、一度に複数頭の猟犬と意思疎通を図るのなんて、到底無理だなと実感した。

なにせ現時点で、一対一でも四苦八苦しているのだ。

犬は“群れ”を形成する動物であるから、複数頭になると、彼らは“個”ではなくて“群”という認識になる。

群であるならば、その集団を統率するリーダーが生まれて、全体としてはリーダーの意向に沿う行動を取るようになる。

主と犬リーダーを擁する群れの間に主従関係が構築されていなかった場合は、
犬たちによるセルフハンティングになっていくわけだけど、
仮に犬リーダーが主と主従関係にあって信頼関係もできているとするならば、

<主>→<リーダー>→<群れ>

というような、指揮系統のフローになる。

この場合でも、やはり犬リーダーというワンクッションを挟む分、タイムラグというのか、ズレが生じる気がしてしまう。

主と犬リーダーの間で共有している感覚や認識と同レベルのものを、他の犬たちとも共有するということは非常にレベルの高いことである気もしている。

複数頭引きで、全ての犬と意思疎通を図って猟をしている猟師さんがいたら、
お話をお聞きしてみたい。それができているなら本当にすごいことだと思う。

そんな考えでいるので、ぼくは単犬引きの単独猟を目標にしている。

そして、やはり訓練はしっかりしていこう、という結論になった。

ぼくの場合は単犬であるけれど、きっとそれぞれの猟スタイルに適した猟犬の飼い方、引き方があるはずだ。

話を戻して、トレーニングと散歩のこと。

トレーニングのときは、「指示をクリアできたかどうか」よりも、「飼い主に意識を向けられているか」に重点を置くようにしている。

トレーニング中でも、犬の気が散ってしまうことはある。

耳や目や鼻の向く先が別のところにある瞬間を注意深く観察する。

そういうときには、指示を出さないし、そっけない態度をとる。

こちらに注意が戻った瞬間を読み取って、声をかける。「意識を向けてくれていると嬉しい」という感情を伝える。

その”差”を明確に生み出して犬に感知してもらうことが重要である、ということが分かってきた。

犬たちの物事の理解力や、感情を読み取る能力が高いことは自明のことなので、
円滑で密なコミュニケーションを取れる状況と関係性をいかにつくっていくか。

ここに注力していこうと思う。

散歩は単なる散歩ではなく、自分自身の観察力を鍛える意味でも、そして犬の“落ち着き”を形成していく意味でも、十分にトレーニングの一環となっている。

その次のステップはいよいよ山だ。

そろそろカイと一緒に山を歩こうと考えているけど、
楽しみでもあるし、不安でもある。

山ではどんな反応を示してくれるのだろうか。